遺言書の基礎知識 - 遺言書で何ができるか

 相続に関しては大きな効力のある遺言書ですが、遺言書でできることは、民法等の法律や学説により以下の
ように定められています。

遺産の処分に関すること

 ● 相続分を指定すること、及び相続分の指定を委託すること。
    相続分の指定とは、各相続人が遺産を相続する割合を分数的に指定することです。
    遺言によって指定することも、指定を第三者に委託することも可能です。

 ● 遺産分割の方法を指定すること、及び分割方法の指定を委託すること。
    遺産分割の方法には、以下の4種類の方法があります。
      ① 現物分割 : 特定の現物を特定の相続人が取得することを指定する方法。
      ② 換価分割 : 不動産等の財産を売却し、換価した金銭で分割する方法。
      ③ 代償分割 : 財産のすべて、あるいは大部分を一人の相続人が相続し、他の相続人には代償を
              支払う方法。
      ④ 共有分割 : 相続人全員の共有とする分割方法。
    これらの方法を使用し、遺産分割の具体的な方法を指定します。

 ● 遺贈をすること。
    相続人及び相続人でない者(法人でも可)に遺産の一部または全部を無償で、あるいは一定の負担を条件
   に、譲ることを遺贈と言います。
    (ただし、一般的には、相続人でないものに遺産を譲ること=遺贈 と解しても問題ありません。)

 ● 寄付行為をすること。
    寄付行為とは、財団法人設立のために財産を拠出することですが、単に拠出するだけでなく、法人設立
   のための全ての手続も行わなければなりません。

 ● 信託をすること。
    信託とは、その受託者に財産を譲渡し、管理・運用させることで得られる運用益を、自分と異なる第三
   者(受益者)に与えるという契約をすることです。

相続人等の身分に関すること

 ● 推定相続人を排除すること、及び相続人の排除を取消すこと。
    推定相続人による ・虐待 ・重大な侮辱 ・その他著しい非行 が遺言者に対して行われた場合に、その
   推定相続人を相続人から排除することができます。
    また、生前に行った推定相続人の排除を取り消すことも可能です。

 ● 認知されていない子供の認知をすること。
    認知されていない自分の子供を認知することができます。
    ただし、通常の認知と同じように、以下の制限があります。
      胎児に対する認知     : 母親の同意が必要。
      青年に対する認知     : 本人の同意が必要。
      死亡した子供に対する認知 : 死亡した子供の直系の卑属の同意が必要。
                    (直系卑属がいない場合は認知できない)

 ● 未成年者の未成年後見人、及び未成年後見監督人を指定すること。
    遺言者が親権者又は未成年後見人を務める未成年者の未成年後見人やその監督人を指定することが可能
   です。

分割協議や遺留分などに関すること

 ● 特別受益の持ち戻しを免除すること。
    遺言者から特別受益となる贈与を受けた相続人に対し、その贈与に関する持ち戻しを免除することが
   できます。
 ● 共同相続人の担保責任の減免・加重すること。
    遺産分割の際には価値があると見積もって分割した財産が、実際には価値が無いため、見積もった分の
   財産を取得できなかった場合は、その財産を受け取った相続人は、他の相続人に損失分を請求することが
   でき、他の相続人はこの損失額を相続分に応じて支払わなければなりません。

    例えば、被相続人のものと信じて相続した土地が、実は被相続人のものでないために財産を取得できな
   かった相続人は、他の相続人に相続分に応じた弁済を求めることが可能です。

    遺言書では、この他の相続人が支払わなければならない責任を、相続分とは別の割合に定めることが、
   可能です。

 ● 遺贈に対する遺留分減殺の順序や割合を定めること。
    遺留分を侵害された相続人が、遺留分減殺請求をする場合において、その順序や割合を以後により定め
   ることができます。

 ● 遺産の分割を禁止すること。
    被相続人は、相続開始後の5年間に限り、遺言書により遺産分割を禁止することができます。
    相続人の一部が未成年であるため、その未成年者が成人してから自分自身で遺産分割協議を行わせたい
   場合によく利用されます。

その他のこと

 ● 遺言執行者を指定すること、及び指定を委託すること。
    遺言執行者 = 遺言内容を実現する人 を指定すること、又はその指定を委託することができます。
    遺言執行者には、未成年者や破産者で復権を得ていない者でなければ、誰でもなることができます。

    相続人の排除及び排除の取り消しや、未認知の子供の認知は法律により遺言執行者でなければできない
   こととされている場合だけでなく、遺言の執行を円滑に行わせたい場合にも遺言執行者を指定しておく
   ことをお勧めします

 ● 祖先の祭祀主催者を指定すること。
    祖先の祭祀主催者とは、簡単にいえば先祖代々のお墓を管理する者のことです。
    墓石や仏壇・仏具等は基本的に相続財産ではありませんが、これを誰が受け継ぐのかを遺言により指定
   できます。

 ● 生命保険金の受取人を変更すること。
    第三者が受け取る死亡保険金の受取人は、契約者である遺言者の意思で変更することが可能です。
    これは、遺言によってもできるものと考えられています。
    ただし、実際に遺言で受取人を変更することは非常に稀です。
    遺言に書けるような状態なら、保険会社に連絡し受取人の変更をすれば良いからです。


 次は、「相続させる遺言」です。


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